第1回から私のCTAへの道について、記憶を掘り起こしながら綴ってきました。
この回で一気にまとめることにします。
私は2010年8月11日に国際TA協会で開催される資格試験に合格し、晴れて教育分野CTA(Certificated Transactional Analyst)の資格を手に入れました。協会の慣例で年に1回、その年のホスト国によって、全体大会が開催されます(日本も2013年にホスト国になっています)。
その際に、資格試験が付随して開催されるのです。また自国にTA協会がある場合で国際TA協会と肩を並べて活動を共にしている協会は、自力で試験も行っていますが、やはり大きな大会では、たくさんの人が受験します。受験生は、その年にどこの国で試験が予定されているのかをチェックして、自分の試験の計画を能動的に組み立てて受験するという仕組みです。
“な、じりつてきだろう~~~(杉ちゃんテイストで…💦)”
その日体験したいくつかの出来事を記して、TAコミュニティにおける試験の構造とプロセスが、いかにTAらしいかを粒立ててみます。
これまでに記したように、いろいろ大変な出来事もあったけれど、試験に合格し10年経過した今現在思い出すことは、その時々の成長の壁をどう乗り越えたのかということと、その時にもらったTAコミュニティ・メンバーからの温かく・示唆に富んだストロークの数々です。
試験は朝から始まります。ホテルの宴会場大中小が試験会場に充てられ、大会場は全ての関係者が出入りできるオープンな試験委員会のスペース(headquarter)になっています。
私はA会場の2回目の試験と決まっていました。
試験の流れは、
・前の人が終わった後に入室し、自分で部屋を整えます→➀
そして、一旦大会場に戻り待機。
(そこでは合否、悲喜こもごもの人間模様が展開していますので、ドキドキハラハラ💦)
・次に試験官4人がA会場に入って打ち合わせ。受験生が提出した書類や事例の音声録音を通じて、どのような問いかけが受験生の実践家としての良さを引き出し、対等感をもって対話を生むことができるかが真剣に話し合われます。(そしてお互いに良い試験にしようね~とストローク交換)
・時間が来ると、試験官リーダー自ら受験生を呼びに来ます→②
で、試験開始!!
・まず4人の試験官が自己紹介して、つぎに受験生(通訳も)自己紹介→③
・そして、いよいよ質疑応答。
提出資料と3事例の音声録音を聞きながら、ⓟⒶⓒをフル稼働してディスカッション→④
・そしてそして、受験生の目の前で合否判定→⑤
で、ごうか~~~~く💕 やった~~~ハグハグハグ
となります。
感激の嵐を全員でひとしきり味わった後、受験生は大会場に勇んで戻り、自分で合格報告。
なんて〖自分で〗を重要視する人達でしょうか♪
一方、試験官は、この時間のプロセスが受験生のこれまでの努力・成し遂げた実績と能力を引き出せたかどうかをしっかりAdultで振り返ります。流石、プロフェッショナルな上級者たち……
この間だいたい約1~2時間半。
合格者は試験会場や大会場で待ち受けた関係者と涙の再会!
壁に貼られた試験スケジュールにある自分の名前のところにマジックで〖PASS〗と書き入れ、はい、チーズ!
(ちなみに、惜しくも「Defer/先送り(不足点を補って再度挑戦してね)」になった人は、悔し涙を流すことになります。が、それもトレーナーや試験官たちからしっかりサポートされ、皆さん再挑戦をされます。)
試験の日は、国際大会の前夜祭に当たることがほとんどで、ウエルカムパーティが開かれ、1年ぶりに会った世界のTA仲間が再会を喜び合うのですが、それに合わせて試験に合格した人も合格証書授与式があり、全員から温かいストロークをたくさんもらうことができます。
この写真が10年前。左が私のトレーナー(本会の理事)、右側4人のうち3人が試験官
で、The TA!!という体験は5つの場面(下のオレンジ色の文字の部分)
➀試験会場を自分で整えるということ
②試験官が受験生を呼びに来るということ
③試験官が自己紹介して受験生+通訳という順番が示すもの
④6人の自我状態をフル稼働したコミュニケーション
⑤受験生の前で合否判定するということ
➀ 試験会場を自分で整える。
受験生は、各国の資格要件に基づいたTAの実践家です。きょいうく分野の場合は、言ってみれば教えるプロです。普段自分が誰かを教育する場は、自分と関わり、一緒に何かを生み出す相手(生徒・学生・受講生)が〖安心できる場づくり〗のできる人であるはずです。要は、「その場のリーダーは自分であるという自覚と責任感が求められている」ということで、試験会場という、一見受動的に見える場ですら、自分自身で整えることが求められるのです。その環境とは、目標とした成果を出すことができるように、また何よりも受験生自身が安心したうえで、試験官とのやり取りに集中できる環境です。
この意識で臨めば、空気に飲まれることなく、相手と対等に関わるパワーが戻ってきます。
➀のエピソード
自分が立つ位置、通訳の位置、試験官の座る配置……すべて自分で配置し直しました。私は、家族の写真と日本で制作中だった接遇の小さな本の原稿を、自分側の机に並べました。私の今大切にしている人とモノと文化を、3つの国から参加している4人の試験官に知って欲しかったからです。写真は成人式で長女が振袖を着ていたものを飾りました。
会場にあった結構でかいゴミ箱をどうしましょう? と悩んでいた時、日本から参加していた教授会員Y・I先生が様子を見に来ていて、私に一喝!
「全部自分で決めたらええねんで~」
そうだ……過剰適応せず、成人の自我状態を機能させ現実吟味して、PとCを柔軟に使って、会場の全員が対話に集中できるように自分がやればいいんだと、ある種の覚悟が再確認できた瞬間でした。
因みにそのでかいごみ箱はY・I先生に持って出てもらった記憶が……
ゴミ箱も対等感の学びに繋がる…(笑)
② 試験官リーダーが呼びに来る
そうなんです、これを言うと皆さんびっくりされるのです。
上下関係を重んじる日本ではあり得ない光景かもしれませんが、ITAAのTAではあり得るのですよ。とにかく皆さん献身的に活動されるのです。
②のエピソード
大会場に私を呼びに来た試験官リーダーは、途中でこんな言葉をかけてくれました。
『Masumi,僕はあの会場がとても好きだよ。特にご家族の写真がいいね!』
緊張した私を頑張れ~~と鼓舞するのではなく、私の心配りに対して自分の率直な感想を添えてくださったGiles Barrow試験官リーダーの温かいストローク。どんなに私がうれしかったことかは、皆さんお分かりですよね……
(上部の写真の男性。日本語版でもうすぐ世に出る「Educatinal TA」の編著者の一人で、弊会・世界のTA窓にも近く登場予定です)
③ 試験官が先に自己紹介してから受験生+通訳という順番
これは、ずばり[対等感・平等感]を体現していますね。
日本の文化慣習であれば、部屋に入ると下位者である受験生から「失礼します。私は○○と申します、どうぞよろしく……」ですが、TAコミュニティは異なります。
まず試験官から順番に簡単に自己紹介するのが普通。言語と非言語をフル活用して『あなたと協働します』というメッセージを送ってくれ、それに受験生も応えることから良好なやり取りが始まるのだということを、その場の全員が知っているのですからこれは当然の流れでしょう。
③のエピソード
会場に着き、入室すると、4人の試験官は立ち上がり迎え入れ着席。
試験官リーダーから自己紹介が始まりました。
私は、一人一人と短い『やり取り』をしました。当然平行交流です。
「こんにちは、私はオランダから来た○○です」(*^_^*)
「こんにちは、オランダはチューリップが世界一きれいな国ですね」(#^.^#)
「私は、トルコからきました。資格は○○です。」(*^^*)
「2006年にトルコ大会に初めて参加しました。とても美しい街や寺院が思い出深いです」!(^^)!
笑顔で挨拶を交わし、目の前の一人一人、その人とその人の国の文化に敬意を払い、相互尊重の契約を交わすことができた瞬間でした。
TAを学ぶ大きな意義は、この一場面に凝縮されていると私は思っています。
I’m OK, You are OK をどう創りだしていくのか……実践家としての第一ステップ、お互いの腕が試されます。
④6人の自我状態をフル稼働したコミュニケーション
試験の間中、会場にいる6人(試験官4人、受験生+通訳)は、お互いの自我状態をフルに活動させ、ユーモアを交え、温かく、真剣に、目の前の相手と交流します。
何年もかけて準備をしてきた受験生をリスペクトしつつ、客観的評価基準を守りながら、一問一答に全員が『全集中』することで、お互いが満足できる結果を生むことができるのです。
正直に言うと、ここは「あら~~今ならもっと素敵な答えを言えるのに!」と残念に思う回答もありますが、ということは10年経って私も一回り大きくなったと思いましょう。
(天の声;身体も一回り大きくなってるけどね…苦笑)
⑤ 受験生の前で合否判定する
最後に、時間と内容を考慮して、これで終わり!となり、試験官リーダーが受験生に問いかけます。『今から評価表に点数をつけますが、このまま部屋にいますか?』、私は当然『はい』。
試験官の責任性も際立つこのやり取りこそが、常に公平性、オープンさを追求するTAらしさ、国際TA協会の“あり方”の特徴だと思っています。
で、目の前でスコアシートを読み上げて、合否がその場で判明。
この間、心臓はバクバク、口から飛び出そうな勢いですが、合否どちらにしても目の前で詳らかに進行していくのですから、後味は良いのではないでしょうか。
で、この大会が終わってすぐに仲間と別れ、一人プリンスエドワード島へ移動して2日間のご褒美旅を満喫しました。
合格する! と決めたその日からこの旅を準備していたのです。
私は、小学校高学年で出会った「赤毛のアン」の世界に、青年期にどれだけ助けられたか分かりません。主人公アンの自分を豊かにする想像力や困難に負けずたくましく生きる姿、アンを愛する心の友ダイアナの純粋さや周囲の個性あふれる大人たちの当時の生き様を読みながら、『ああ、私もこんな風に生きていこう』と自分を鼓舞したあの頃を懐かしく思い返しつつ、本に書かれたとおりの美しい島で日本人ガイドさんに案内してもらい“ああ、日本語ってすてき”とほくそ笑んで、楽しい時間を過ごした10年前がコロナ禍の今では夢のように感じてしまいます。
おまけ:
カナダ大会では、こんな貴重な合格証書が飾られていました。誰のか分かりますか?
エリック・バーンの資格証、本物です。50周年記念大会だから見せてもらえて撮影できた貴重な1枚。なんと、試験委員長はバーン自身ですぞ(笑) なんや、じぶんでじぶんに出したんか~い!
弊会のブログを読んでくださっている皆さん、
「へぇ~、TAの国際的な資格ってこうやって準備してこうやって受験するんだ~~」と興味を持ってくださいましたか?
TAを学び、TAを極める!
もちろん自分で決めるのですが、その道程は“独りぼっち”ではありません。
仲間と学び、教えあい高めあって試験当日を迎えるのです。
皆さんも、このチャレンジを私達と一緒にしませんか?
まずは、この講座から