山口県在住のヨネさんこと、米山高史(よねやまたかふみ)です。
今回も、前回の新年企画「吉田松陰語録」に続き、山口県・萩にちなんだお話です。
【毛利氏】
萩は、毛利氏によって江戸時代に築城された萩城の、36万9千石の城下町です。
戦国時代、毛利氏は最盛期には山陽道・山陰道10か国と九州北部の一部を領国に置く最大級の戦国大名に成長しました。
今週まで放映されていたNHK大河ドラマ 「麒麟がくる」 にも登場した「本能寺の変」は、織田信長の臣下である羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が西国の覇者である毛利氏と争っていた時に起こりました。
信長の死後、領地を維持したまま織田方と和睦を結んだ毛利氏は、明智光秀を倒した羽柴秀吉に臣従し、安芸ほか8か国で112万石の所領を得ました。豊臣秀吉の天下統一後、当主の毛利輝元は広島城を築城して本拠を移し、後に豊臣政権の五大老の一人となります。
しかし豊臣秀吉の死後、1600(慶長5)年に徳川家康が率いる東軍と、石田三成を主将とする西軍との天下分け目の決戦「関ヶ原の戦い」が起こります。西軍に味方した毛利氏は所領を中国8か国から周防国・長門国の2か国、112万石から29万8千石に減封され、萩の地で長州藩(萩藩)を治めていくこととなります。
このおよそ250年後、松陰先生が萩の「松下村塾」で指導に当たった「高杉晋作」や「桂小五郎」たちが、同じく関ケ原の戦いに敗れ減封された島津氏の薩摩藩と「薩長同盟」を結成し、徳川政権「江戸幕府」を倒すことになるわけです。
なお、萩城は江戸時代250年余りの間、長州藩(萩藩)の拠点でしたが、明治時代に破却されました。現在、城跡は指月公園(しづきこうえん)として整備され、石垣や堀(水堀)のみが当時の面影を伝えています。
小規模な国人領主に過ぎなかった毛利家を、一代で山陽道・山陰道10か国を領有する戦国大名の雄にまで成長させたのが、毛利輝元の祖父である毛利氏第12代当主 「毛利 元就(もうり もとなり)」 です。
この毛利元就が、死ぬ間際に3人の息子(隆元・元春・隆景)を枕元に呼び寄せて教訓を教えたという逸話が「3本の矢」です。
「三矢の教え」ともいわれるこのエビソードは次ようなものです。
晩年の毛利元就が病床に伏していたある日、息子の隆元・元春・隆景の3人が枕許に呼び出された。
元就は、まず1本の矢を取って折って見せるが、続いて矢を3本を束ねて折ろうとするが、これは折る事ができなかった。
そして元就は、「1本の矢では簡単に折れるが、3本纏めると容易に折れないので、3人共々がよく結束して毛利家を守って欲しい」と告げた。
息子たちは、必ずこの教えに従う事を誓った。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
最近では、安倍前首相の地盤が山口県であることから、第2次安倍内閣の基本三政策の通称が「三本の矢」でした。
戦前の小学校教科書などにも「毛利元就の三本の矢の教え」として掲載されていたというくらいに有名な話ですので、ご存じの方も多いと思います。
それではTAの世界にも 「3本の矢」 があるのをご存じでしょうか?
【特別なやりとり】
TAでは 「やりとり」 を図示した場合、 「ストローク」 を自我状態の間の「矢印」で表すのが一般的です。
「ストローク」 については、前回のブログ「道」もご覧くださいね。
これは、娘を心配する母親と、機嫌が悪い娘との会話(やりとり)を図示したものです。
不安に駆り立てられた母親が何を言っても、娘は受け入れてくれないでしょう。
「固定化された」やりとりがいつまでも続き、問題が解決しない、息苦しい状況が想像できます。
この状況を打ち破るのが 「オプションズ(代替案)」 です。
S・B・カープマンはエリック・バーン記念科学賞受賞論文「オプションズ」の中で、
『私たちは自分が好む方法でやり取りが可能で、問題が解決しない「固定化された」やりとりから脱却する 「オプション(代替案)」 を選択することが出来る』
と述べています。
その中でも 「ブルズ・アイ」 は、相手の3つのすべての自我状態に届く直接的なコメントとされています。
「ブルズ・アイ」は、その通り 「雄牛の目」 のことであり、 雄牛の 「急所」 を意味します。
また、ダーツでは的の真ん中の赤い部分を意味し、ここでも 「ブルズ・アイ」 はやはりゲームの勝敗を分ける急所と言えます。
まさに「的を射た」やりとりという訳ですね。
この「ブルズ・アイ」 名を持つやりとりについて、クラーク・ディクショナリーでは次のような例が取り上げられています。(先程の母親と機嫌の悪い娘とのやりとりの続きです)
「 あなたが怒っているのは分かるし(A)
お母さんにあなたののすることを邪魔する権利は無いわ(P)
でも、とにかくそのことについて一緒に話してみない?(C)」
このやりとりは「的を射た」まさに「3本の矢」のようです。
このストロークが、娘に届くかどうかは分かりません。けれど、先程の不安に駆り立てられた母親と機嫌の悪い娘との「固定化された」やりとりとはずいぶん違うのではないでしょうか?
母親の自我状態から出た 「3本の矢」 は、1本の矢では無理だった娘の固まった心を溶かす力を持っている。私にはそんな風に思えるのです。
(参考文献)
『OPTIONS』 Stephen B. Karpman TAJ, 1:1, January 1971. p.79-87
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