私は英語が苦手です。
中学校から勉強を始めて、高校、大学と計10年間勉強してきているはずなのに……
大学卒業後はIT会社を先輩と作って30年ちょっと働いてきました。
ITはカタカナ用語が多い、要するに英語を日常的に使う機会は多かったと思います。
しかし、専門用語が多いので、単語レベルの理解、専門用語を知っている、といえるくらいです。
最新技術を理解するためには、英語が読めなければならなかったのですが、
そこまで踏みこむことはできませんでした。
そんな私ですが、今、英語を楽しいと思い、もっと使いたいと思っています。
英語が「苦手」とはどういうことかを考えてみると、
私の場合、言葉を「知らない」ことが大きく影響しているように思います。
書くときに必ずしも正しい文法を使えなくても、「言葉(単語)」を知っていれば伝える、読むことはなんとなくできる気がしますが、単語を知らないと、何も始まりません。
「どうしたって私は単語が覚えられないんだ」という決断をしてしまった私は、
「英語が苦手」という状況に納得してしまっていたのです。
そんな気持ちで、50数年過ごしてきましたが、
TAを学び始めた今、様子が変わってきました。
特に、昨年からいろいろな体験を重ね、英語が楽しくなってきました。
そんな私の英語の愉しみについて、今回は書いてみたいと思います。
【 きっかけ 】
昨年は、生活環境の変化もあり、変化に富んだ1年となりました。
英語への関わりもその一つです。
現在、私はCTAトレーニ―としてTAを学んでいますが、必然的に英語の文献を読む機会が増えました。
TA理論を理解するためには、英語論文を読まなければいけない、というプレッシャーもありました。
そんな環境となったとき、英語論文を読むというだけにととまらず、様々な視点で英語に関わることになりました。
そのひとつは「絵本」です。
【 絵本de英語 】
私は絵本未来創造機構(通称「えほんみらい」)にも所属しており、EQ絵本講師Rとしての活動もしています。
えほんみらいが提供している講座のひとつに「絵本de英語」があります。
……絵本で英語が学べるの?
そう思われるかもしれませんが、ちょっと違います。
この講座は、英語の苦手意識を払拭し、英語は楽しいんだ、ということをわかってもらうための講座です。
子どものための講座ではなく、お父さん、お母さんのための講座です。
ある調査によると、英語を苦手と感じている日本人は7割近くいるという結果があります。
日本では、教科書を読む、文法を覚える、英語の文章を分析するなどの学習スタイルで学んできましたが、少なくとも私の英語力は全然伸びていません。
では、英語を聞いてわかるようになりたい、読みたい、話したいと思ったときどうすればよいでしょう。
たくさんの言語習得者や英語を教えている方が共通して言っていることがあります。
それは、英語に対する考え方を変えること。
すなわち、言語(英語など)は、単語や暗記をすることではなく「言葉の考え方や感じ方をありのままに受け取ることだ!」と。
先に紹介した講座の講師をしている私は、二つの事例を紹介します。
そのうちのひとつは、新婚旅行でハワイに行った時の体験です。
ホテル主催のガーデンパーティに妻と参加したのですが、周りは外国の人ばかり(当たり前ですね)。
しまったと思いながらも、飲み物を飲んでいると、日本人と思われる方を見つけました。
嬉しくなった私が日本語で話しかけると、返ってきたのは「英語」でした。
冗談を言っているのかと思ったら、その方たちは中国系アメリカ人のご家族でした。
まずいと思いながらも、その方のにこやかなお顔を見ていたら、
このまま話をしたいと思い、知っている単語とジェスチャーで会話を続けました。
その場の経験を思い返してみると、英語なんてできない、話せない! どうしよう、なんていう気持ちはどこかに飛んでしまい、話すことの楽しさでいっぱいでした。
通じないこと、意味の分からないこともたくさんありましたが、
相手の方もスピードをゆっくりにしたり、単語を変えたりして会話を楽しもうとしてくれました。
会話内容はほとんど覚えていませんが、とても楽しかったことが思い出されます。
私以上に英語が苦手な妻に、私が通訳する、というちょっと考えられない状況にもなっていました(夫婦の絆もちょっと増しました!)。
この場面で分かる通り、共通言語として「英語」を使い、お互いを理解しようとする。
英語は、「話すこと」つまりコミュニケーションの道具なのです。
こういう場での英語は「教養」ではなく、実用的な「ツール」です。
100点を取るために学ぶのではなく、コミュニケーションを楽しむために学ぶのです。
母国語である日本語を使っても100%伝えるのは難しい場合があります。
最初から100点を取ることを目指すのではなく、
英語は楽しい、面白い、ということを体験し、英語の苦手意識を払拭するのが「絵本de英語」のゴールです。
絵本は、絵や物語からありのままを感じることができます。
単語を知らなくても、イメージすることができ、
英語をそのまま、ありのまま受け止めることができます。
絵本を使って、英語を楽しむ。
この、英語を楽しむというマインドを思い出したことによって、
私は、英語をハードルの高いものから、日常使いのツールへと下げることができました。
気持ちの中でのハードルが下がると、英語を見るだけで「パス」していたのが、
まずは読んでみるようになりました。
理解できるとはいかないまでも、「読む」ことができるようになったのは大きな進歩です。
【 IT技術の発展 】
読めるようになっても、内容が理解できなければやっぱり面白くありません。
内容を理解するために、ハードルを下げてくれたのがIT、つまり自動翻訳です。
これまでは、辞書を片手にわからない単語を引いてはメモして、
そのあと文章を読解する、ということをしていました。
この方法がなかなか私にはハマらなくて、遅々として理解が進まず挫折を繰り返していました。
ここ数年の自動翻訳の精度は格段に上がり、9割がたは翻訳結果をそのまま理解してもいいように思います。
そのおかげで、まずは文章の全体構成がわかり、わからないところ(単語)を辞書で引くという方法に変わりました。
私は、まず全体を把握したいので、自動翻訳を使って英語を読むことは、自分のスタイルにしっくりきました。
現在、主な自動翻訳ツールとして「Google翻訳」と「DeepL翻訳」があります。
どちらも無料です!(これも大きい!)
私は翻訳する際には両方を使用しています。
同じ自動翻訳でも訳され方は異なるので、両方を読むことで2方向からヒントをもらえます。
その結果、自分で最終的にどのように訳すのかを考え決められます。
明らかに意味が通じない単語は辞書を引きます。
この作業を繰り返すことで、英語が読める楽しさが増してきました。
無理して頑張って成果が出ないのであれば、誰かに何かに支援を求める。
とても大切なことです。
こうやればいい、こんな方法がある――いろいろなノウハウがありますが、
自分に合わなければ、自分のスタイルに合わなければ使うことができません。
自分のやり方を変えて頑張るよりは、やり方にあう方法を見つけるほうが馴染みやすいです。
自分が心地よく過ごせるのであれば、利用できるものはどんどん利用していきたい。
自動翻訳はまさにそんなツールです。
【 TA論文読み 】
自動翻訳を使って読んでいる主なものはTA論文です。
英語が読めるようになった。
でも、読めることはゴールではありません。
読んで内容を理解することがゴールになります。
昨年から、TA Shuharism研究会では、
と題して、講座を開催しています。
ここでは、エリック・バーン記念科学賞の受賞論文を翻訳し、その内容を学んでいます。
当然ながら、論文の原文は英語なので、翻訳する必要があります。
ここで大切なことは、翻訳された論文だけを読むのではなく、原文も読むということです。
著者がその論文で何を伝えたかったのか、言葉のニュアンスも含め考察が深まります。
逆に、時代背景や社会環境、著者の職業や立場などに自分の理解が追い付いていないと、
理解するための前提条件が整わず、何を言っているのか「?」のところもあります。
この疑問を解消することが、論文の理解につながります。
私がIT会社に勤めていた時、お客様の要望を聞いてシステム設計したものをフィードバックします。
その際、お客様の立場に立って、お客様の理解できる言葉で説明しようと心がけていました。
私がシステムの専門用語を使って話しても、お客様は半分理解できるかどうかだったでしょう。
お互いが自分の知っている情報だけで話をしても通じ合うことはできません。
お客様を理解し、お客様の言葉を理解し、お客様がわかる私の言葉でフィードバックしてようやく理解が深まります。
論文も、私の知識だけで読んでは理解できません。
時代背景や社会環境、著者の職業や立場などを理解して、
あぁなるほど、そういうことか!
と合点がいきます。
エリック・バーン記念科学賞の受賞論文の多くは、治療、セラピーの現場を意識したものです。
私は、治療、セラピーの現場にいるわけではないので、最初は、読んでも内容に違和感を覚えることが多々ありました。
ただ、治療、セラピーを意識して書かれているとわかると、なるほどと思えてきます。
また、英語圏の論文なので、英語圏では当たり前の言い回し、単語がわかっていないと、
ニュアンスがつかめないこともあります。
そんな文化圏の違いも意識できるようになってきました。
そこで、私の探求心の芽が一つ顔を出してきました。
【 英語文化圏を知る 】
英語を翻訳していると、直訳した日本語では妙に堅苦しい印象の表現になることがあり、
なんでそんな言い回しをするのだろうと感じます。
逆に、日本語にすると長文になることを、英語は短いフレーズですべてを言い表していることもあります。
このような表現の違いは、そもそも国の「文化」が違うことに所以しています。
そんな違いに興味を持って「日英違い」を学ぶことにしました。
題材は「絵本」。
絵本からことばの力を考え、言語が違えば世界は違って見えている、ということを学びます。
なかなか興味深いものです。
そこで感じた、日本語圏と英語圏の大きな違いは
日本文化語では「全体をざっくり把握してから、個別の話をする」
英語文化圏では「まずは焦点を絞って、そこから拡げていく」
ということでした。
日本人は全体を表現するところから始めようとするが、
西洋では主体となるものから表現しようとする傾向がみられるそうです。
つまり同じ「もの」や「動作」を見ても表現方法が異なり、そこにニュアンスの違いが生まれます。
翻訳には「直訳」と「意訳」がありますが、直訳するとわかりにくくなる場合が多く、意訳することによってなるほどと思えることもあります。
ただ、意訳しすぎるとその国の文化を理解できないこともあるなぁと思えるようになりました。
絵本作家ヨシタケシンスケさんの作品に
「もうぬげない」という絵本があります。
英語でも出版されていて、そのタイトルは
「STILL STUCK」
※ リンク先amazon
日本語タイトルを自動翻訳すると
I can't get rid of it anymore.(googl翻訳)
I can't take it off.(DeepL翻訳)
英語タイトルの「STILL」は「まだ」と訳しますね。
日本語では「もう」が英語では「まだ」となっています。
同じ絵の表現にもかかわらず「もうぬげない」のか「まだ動けない」のか。
この絵本は日本語も英語もヨシタケシンスケさんが書いているので、
ご自分で表現を選んだのだと思いますが、その国にあった訳の面白さを感じます。
このような表現の違いが生まれる文化の差異を理解することは、その国への関わりが多くないと難しいかもしれません。
ただ、難しいながらも、違いがあることを理解しておくことによって、かえって私の中では翻訳する楽しみが増えました。
逆説的な楽しみ方ですが「理解できない楽しさ」です。
何でもかんでも理解するのではなく、いろいろな人と関わることで理解を深めていく。
その楽しさを得られました。
いつか英語を、聞いてわかりたい、話したい、読みたい、と思っていましたが、
そのスタートラインに立って、一歩踏み出すことができました。
英語は楽しいです!