最近、国内外のTA講座で「Physis:フィシス」
(ギリシャ語読みだと、ピュシスらしいですが)、
という言葉を耳にします。
今日は、そのことについて書いてみることにしました。
『physis』の意味をインターネットで調べてみると、
ギリシャ語で、
自然、本性。
人間の主体と離れて独立に存在し、
変化する現象の根底をなす永遠に真なるもの。
と、あります。
理解できそうでもあるのですが、
ピンとくる説明は見つからないままでした。
私にとって、常に「TA理論やTA概念」と「実体験」が
重ならない限り、人に伝えることは難しいです。
ということで、この「Physis」もモヤモヤ状態が続いていました。
そのようなモヤモヤした中、
フィシスで脳裏に浮かぶのは、
Trudi Newtonの「レジリエンス・サイクル」
(教育分野のTA、2022 監訳:安部朋子、訳者:青沼眞壽美、豊田直子、㈱ホリスティックコミュニケーション、P.43)
にある3つの自我状態の中心を垂直の矢によって下から上に向かって示している図です。
このダイヤグラムを理解できるように説明したい!
というのが今回のテーマとなりました。
【 孫の成長とPhysis 】
昨年8月に生まれた初孫くん。
最近、ファーストシューズを買ってもらい、
自分の足で大地を踏みしめた瞬間の写真が送られてきました。
写真ではありますが、
(祖母としての孫を見る目がそうさせるのか、)
靴を履いた彼は、
「自分の足で初めて大地を踏みしめた」感があふれる表情でした。
彼の姿から彼自身の感動が伝わってくるような写真でした。
違う言い方をすると、
自分自身の目線で
初めて外を見た驚きと感動の瞬間だったのかも知れません。
そしてこれを、TA的に言うと、
新生児の成長は、
生まれた瞬間に、
母親とつながっているへその緒を通しての栄養や酸素を交換するシステムから
肺呼吸に変わる経験をします。 そして、
お腹がすいたり、寒かったり、暑かったり
動物的になんらかの不快を感じたら泣いて、
周囲に自分の存在を伝えることをします。
しばらくすると、自分で自身の両手を動かせるようになります。
声を出せるようになったり、
寝返りが打てるようになったり、
物がつかめるようになったり、
ズリ這いから、這い這い、
そして、立ち上がろうし、
自力で歩き始めます。
―――
個体によって、それらが順番通りにならない場合や、
できないことも中にはあるかもしれませんが、
少しずつ、変化、成長していくことに目を向けると、
これらの次々に起こる変化・成長って、凄いことではないでしょうか!
親が、
次はこうするのよ。次はね~~~~と
「教えてもいないのに!」
できるようになっていく様子を思い出し
これが、Physis!?
バーンが言う、
・「自然の力、それは、ものを成長させ、成長するものをより完璧なものにしようと永遠に努力し続ける力である」
(Bern, A Layman's Guide to Psychiatryand Psychoanalysis, 1957,)
・「物事を成長させ、そして成長するものをより完全なものにしようと永遠に努力する力」
(Berne, Games People Play, 1968)
・「絶えず成長しようとする人間の生来の衝動」
(Bern, What do you say after you sayhello?、1972 from The Clarke's Dictionary)
・フィシスは 「生命と繁栄を強力に推し進める力」を意味する。
Trudi Newton, Hilary Cochrane 翻訳本「よりよいスーパーバイザーになるための手引き」安部朋子、2018年、西日本出版社(P.117)
私達ひとり一人が持って生まれた
生命と繁栄を強力に推し進めるポテンシャル!
そして、これらフィシスは、
私達、TAの4つの分野の実践家たちが
日々、味わっている、耳にする、目にする事柄です。
*例えば、
自我状態構造モデルを講座でお伝えした時
参加者の方が、
「納得しました!
私がずっと気になっていた〇〇〇は、
私が幼い頃に見ていた父親のやり方や話し方そのままだったのですね。
随分長い間、どこから学んだのか?
何が原因だったのか?
不思議に思っていた私自身のことがわかりました!
とてもすっきりしました。
早く帰って親に感謝したいと思います」
というようなことが講座内で起こりますよね。
*あるいは、
ストローク理論の話をした後、
参加者のお一人が子育てで、困りごとの解決策を尋ねられた時、
講師が「先ほどお伝えしたストローク理論を使ってみると、
何か良い考えは浮かびませんか?」と尋ねるだけで、
その講師が考えも及ばないような
その参加者にとっては実現可能で
効果性が高く
楽しい、ワクワクするプランを述べられる時ってありませんか?
講師の私自身が参加者さん達から学ぶ瞬間でもあります。
*あるいは、
連続の講座あるいはスーパービジョン等で
前回気付かれたあるいは、学ばれた内容を
次回のセッションまでに、プライベートや、職場での人間関係の中で上手に応用されて、
新たな人間関係あるいは親密な関係を築くチャンスを
得られた報告を聴くようなことはないでしょうか?
*あるいは、
実際に、TAの実践家として活動している中で、
今までとは異なる自分を発見した時とか。
*OK牧場で
I’m OK-You're OKでい続けている自分であったり、
ゲームをうまく回避した瞬間とか、
ストローク経済の法則からうまく脱却できた瞬間とか、
*そうそう、TA理論やTA概念を使い
絶えず成長しようとしている仲間や自分自身を見つけた時
その時こそ
私たちはフィシスを体験している時です。
何かが原因で自分自身がモヤッとしている時、
そこには
自身の三つの自我状態の下から
垂直に上に向かって突き進むあのアロー(矢)が消失している時なのでしょうか?
私たちはフィシスを持って生まれてきています。
それを取り戻すのが、TAでいう自律です。
自律は、
・気づき
・自発性
・親密性
で成り立ちます。
気づかない、
いつも変わらないワンパターン
ギスギスした人間関係などに気づいた時
自身が持っているフィシスを手放している状態かもしれません。
自分や、周囲の人達のフィシスを
身近に感じる日々を楽しむ!
TAを身近に学び続けるとことは、
フィシスを感じる近道かも知れません。
あべともこ