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「絵本で感じるTA」

第五十回:降幡浩康

私はTAと出会った翌年、絵本と出会いました。

それまでの人生で、絵本との関りはほとんど、いや、まったくと言って良いほどありませんでした。

そんな私が今、絵本講師として絵本のすばらしさを広くお伝えしていることは不思議な気もしますが、必然だったようにも思います。

「絵本」は子どもの為だけではなく、赤ちゃんから大人まで幅広く読むことができます。

ノンフィクション作家であり評論家でもある柳田邦男さんも「大人こそ絵本を」とおっしゃっています。

絵本を読むと枯れた感性をよみがえらせることができます。

絵本を読み終わった後、何か感じるものが残ります。

この感じなんだろうなぁっと考えることがとても良い刺激となるのです。

特に読み聞かせを聞くと、自分で読むのとは違う感覚が心に届きます。

読み聞かせを聞いて、自分で手に取ってみて、また読み聞かせを聴く。

繰り返せば繰り返すほど、いろいろな気持ちが浮かんできます。

そして、気持ちを前向きに、新鮮にしてくれます。

絵本を読むことは、C(Child)を刺激します。

思考する前に、感覚的に心を揺さぶるものがあります

それを受け取ることができた時、Cが活性化し、「感性がよみがえる」ことになるのでしょう。

その他にも、絵本はその内容によってさまざまなTA的な視点を与えてくれます。

そのいくつかを考えてみたいと思います。

◆ 絵本のTA的考察

今回は『かべのむこうになにがある?』という絵本を題材にしてみましょう。

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『かべのむこうになにがある?』

ブリッタ・テッケントラップ 作

風木一人 訳  BL出版

あらすじはこんな感じです。

あるところに、大きな赤い壁があり、その壁はどこまでもずっと続いていました。

壁は、どこからどこまで続いているのか?

だれが いつ どうやって作ったのか?

どうして壁があるのか?

だれも知りませんでした。

あるとき 知りたがりの小さなネズミは思いました。

壁の向こうに何があるんだろう?、と。

小さなネズミはその疑問をみんなに聞きました。

でも、欲しい回答は返ってきません。

そんなとき、壁の向こうから青い鳥がやってきました。

そして、その鳥に乗って壁を越えてると、そこには……。

では、まず登場する動物の自我状態機能モデルを考えてみるとどうでしょう。

◆ 自我状態機能モデル

ねずみは、好奇心旺盛。

知りたい気持ちがあふれています。

ねずみの表情は、何かねだるような、純粋に教えて欲しいと思えるように感じます。

NC(Natural Child)があふれているように感じます。

最初に聞いたのは「怖がりのねこ」

“

「かべがあればだれっもはいってこれないでしょ。あたしたちを守ってくれるのよ。そとにはこわいものがいっぱいあるから」

ねこはそういうと、そそくさといってしまいました。

“

この表現からすると、いつもビクビクしている様子が伺えるので、AC(Adapted Child)が強く表れていると思えます。

描かれている猫の目も、「なんでそんなことを聞くんだ?」と言いたげな、そんな雰囲気を漂わせています。

次は「クマのおじいさん」

“

「かべはとてもふるい。むかしからいつでもそこにあったから、あるのが当たり前になってしまったのさ。」

“

とても冷静に答えています。

感情が乗せず、聴かれたことにきちんと回答している様子からA(Adult)で対応できるクマだなぁと思えます。

良い歳月を越してきたおじいさんゆえに、冷静に話しができるのだろうと私は感じました。

次は「おちょうしもののキツネ」

“

「しらんんえ。しりたくもない。ちびっこねずみ。君はあれこれききすぎる。むずかしいことをかんがえるのはやめろよ。そうすりゃハッピーになれる。おいらみたいに!」

“

何とも自己主張の強いキツネです。

人の話しを聴かず、自分の考えを通そうとする姿からCP(Critical Parent)が強めに働いているように思います。

おちょうしもの、と表現されていることからNCが働いているようにも思えます。

最後は「くたびれたライオン」です。

“

「かべのむこうになんてなにもない。やみだ。はてしないやみだ」

らいおんはねずみのことなんかみていませんでした。どこかとおくをみていました。

”

周りの人のことを考えないところから、ライオンもCPが高いと考えられます。

人の話しを聞かないというところからACが低いことも考えられます。

このように見ると、登場する動物のキャラクター、性格はそれぞれ違っていることがわかります。

そのキャラクターの中に、あ、自分と同じような考え方をするなぁと思えたものがあったかもしれません。

これが絵本のひとつの特徴でもありますが、人を絵本の世界に引き込み、イメージの世界で疑似体験することで、感情を刺激します。

◆ ライフポジション

それぞれのライフポジションは次のように思います。

ねずみ I‘m OK, You’re OK(I+Y+)

ねこ I‘m Not OK, You’re OK(I-Y+)

くま I‘m Not OK, You’re OK(I-Y+)

きつね I‘m OK, You’re Not OK(I+Y-)

ライオンI‘m Not OK, You’re Not OK(I-Y-)

ねずみはどのような答えが来てもAで受け止めているように感じます。

どのように答えが来ても、めげるわけでもなく、相手を責めるわけでもなく、沈着冷静に質問をしていきます。

そのように対応ができるのはI+Y+の状態であるからでしょう。

ネコとクマは自分を否定している(ディスカウントしている)ように思います。

そういった点でI-Y+と考えました。

キツネは自分目線で話しをしているところからI+Y-と見えます。

ライオンは自暴自棄のように受け取れるところからI-Y-と感じました。

最初に壁を超えたのもねずみ

外の世界を受け入れられたのもI+Y+のねずみだからこそと思えます。

◆ OK牧場

ねずみの話しを聞いてライオンを除く棒物たちが壁をすり抜けたときの表情は、不安が解消され、新しい世界の美しさに感動し、希望に満ち溢れた表情をしています。

この時、動物たちのポジションは移動に、みんなI+Y+になったのではないかと感じます。

言葉で直接感情を表現しているわけではありませんが、話の流れを自分の頭の中でイメージし、絵から読み取った表情と重ね合わせることでOK牧場の移動も感じられました。

◆ 準拠枠

この絵本は個人が持っている「準拠枠」を超えることを伝えようとしているのではないかと感じました。

誰でも自分の心の中に壁があります。

その壁を超えることには大きな不安を感じます。

この絵本でも、まさに「壁」という表現で、自分で作ってしまっている「壁」は思い込みであって、実際にみることは難しいけれど、取り払うことができることも伝えています。

◆ 絵本で感じるTA

このように、絵本をとおしてTA理論を思い浮かべ、考えることができます。

通常、絵本を読みながら、もしくは読後にここまで理論的に分析することは少ないですが、常にTA的に考える思考を持っていると、絵本の楽しみ方の選択肢が広がります。

私の中では、絵本をTA理論で解釈してみることを、自分の学びの楽しみにしています。

また、楽しめるふたつを持てた今の自分を幸せに思っています。

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