こんにちは、青沼です。
4月に入り、毎年恒例の企業新入社員研修の講師に変身している私です。
今日は、その私の仕事現場について少しお話ししてみたいと思います。
私達教育分野の指導者的存在で当会理事の一人、あべともこさんの著作『ギスギスした人間関係をま~るくする心理学』になぞり、〖教育現場をま~るくする〗ことの重要性とその実践法について一人語りします。
リアルな現場に関する話ですし、個人情報にも十分な配慮が必要ですので、全てをここで語れるわけではありませんが、皆さんにイメージしてもらえるように今回と次回の2回に分けて語ってみますので、お付き合いください。
私の4月の現場の風景講師業と名乗っているので、4月の仕事はそのほとんどが○○会社の新入社員研修です。 担当する講座は「ビジネスマナー」「コミュニケーションスキル」「対話型指導」など、組織活動をするにあたって必須の対人関係力の改善や強化に目的が置かれています。 面白いもので、秋頃には、管理職に必須のリーダーシップトレーニングのようなものが増えてきます。(これは業界アルアルか??) 今年も2社に数日間連続で登壇し、ピカピカの『新入社員』『研修生』と同じ空間・同じ時間で、同じ目的に向かって頑張りました。 (昔は5社ぐらい、最長10日間連続とかやっていた…今は無理…汗) 例えば、ある会社は健康をテーマにビジネスを展開している。またある会社は国民の生活の質を安定させるために重要な製品を開発している会社。 そこに入社してくる若者は、一定範囲の専門的教育を受け、志を持ち入社してきます。今年も多くの若者が私の目の前に登場しました。 みんな、ピカピカ!! そう、良くTVのニュースで放映される光景。入社式を終えた彼らの、前向きな発言や勢いのある受講姿勢などなどが大写しで映るアレです。 この時期、TVの前の国民は、それぞれの立場でニュースを観て、ある種の感動を覚えるのではないでしょうか? おお~~日本は安泰だ!なんて (笑) しか~~~~~し、事実は小説より奇なり!! 『なぜ、ここに入社したのだ、君はァ~~????』とか、『適職かどうか研究して就活した???』というような、配属前から前途多難な様相を示す心配な人たちが結構な割合でいる事実。毎年恒例の研修担当者たちの嘆き。 新人教育20年の私のプロファイルは、こんな感じです。
・会社側が混乱するぐらいやる気をださない人(出せないのではなく、無意識に出さない?;TAでは、値引きの概念にあたる4つの受動的行動のうち1つで「何もしない」)
『青沼心の声:お~~~い、もどってこ~~い。きゅうりょうへるぞ~~』
・講師を凝視し天敵扱いする人(child-ego stateが過剰に反応して転移が起こっている)
『大丈夫、怖くない。ここへおいで(風の谷のナウシカ)』
・さっきまで元気に話してたのに講義の時間になるとエネルギーがグウ~~ンと下がり、居眠りし続 ける人(情報過多で情報を遮断する?人格適応論でいう“魅惑的操作者”タイプか?)
『もしも~~し、ここでねちゃだめですよ~(夜回りのおまわりさん)』
・発言の順番が来たら俄然、貝に変身し、回ってきたマイクさえガン無視する人(これが正しく受動的行動の1つ「無能」だ!と発見した時、なぜか感動した私)
・新人らしからぬ態度で高圧的に発言し、周囲の同期を意のままに操ろうとする人(本人は正しいと思っているので自我状態の汚染又は疎外か? ナルシスト傾向あり)
『あや~、すでに困った管理職並みか??』
・背骨がない??まっすぐ座れない。椅子に座り慣れていない人(Adult ego-stateのエネルギー切れか?)
『今すぐ、ヨガ・インストラクターの友達呼んできたい……』
どんなに優秀な採用プロジェクトメンバーがいる採用活動であっても、人事部門や教育する側が困惑したり指導に悩んだりするような若者が“採用されて”くる。これがリアルな企業内教育現場の実態です。
で、毎年桜がきれいなこの時期の私は、自分のことを〖 珍獣ハンターとか、小姑あおぬま 〗と呼ぶぐらい、観察力がアップします。
上記に挙げたような発言・態度や行動をする新人さんを見つける私の目の鋭さは天下一品
(読者の声;ええ~~、そうなの? 見つけたら嫌じゃないの??)
全然嫌じゃない。むしろ仕事の意欲が沸く、そういう体質です。
私が20年以上にわたり講師として現場で汗を流す中で、新入社員という名札が付いた時期の、ある種特別な存在の彼らを、(失礼ながら)なぜ珍獣と呼ぶのかと言うとですね、、、
最初の彼らは吸収力が良く、にょきにょきにょき……と、アスパラガスのよう。
そのにょきにょき具合をこの目で見定めることができるのは、この仕事この現場が大好きな理由の一つであるからです。
そうなる場を創るためにどうするか? 教育者側に必要とされる重要なスキルは沢山あります。
が、最も重宝するコンセプトは、ストローク概念のいくつかとその実践スキル。
ストロークとは、存在認知の1単位
人間が欲する、あらゆる刺激、身体的接触、認知と承認、そして時間や出来事の刺激などなど。各人が欲する刺激はさまざまで、100人100様。あらゆるものが刺激となり得る。
人は良質な刺激があれば、自走して成長することができるし、そうでなければ自ら腐っちゃう。学習された無能感の方向に行ってしまう…
良好な刺激とは。で、リアルな研修室の1シーンで説明すると…
・仲間とのふれあい:
コロナ世代のど真ん中の彼ら。交わす視線・挨拶1つも大切な交流で、自然にストロークは交換され、彼らの〖ストロークバンク〗に貯金されていきます。
・講師陣とのふれあい:
最初はこわごわ……そのうち講師の顔触れに慣れ、講師からの承認が自分にとって(自分の新しい側面の発見に繋がる)価値のあるものだと気づくようになると、個人的な話もオープンに自ら進んでしてくれます。
傾聴訓練の後などは、講師の個人的なエピソードや嘆きも、寝ないで良く聴いてくれるほど(笑)。
・新鮮で自分に役立つ資料群:
見慣れた大学の資料や分厚い本ではなく、仕事に直結したセレクトされた資料ならば、彼らは食い入るように読み、いっぱい書き込むのです。結果、学習は促進されます。 作成は産みの苦しみですが…
・体験での実習や活発な意見交換:
仲間の能動的な発言態度と意見に刺激を受け、自分の意見も勇気をもって発言すると承認・賛同してもらえる……その心地良さは格別のようで、どんどん『自分で考える能力』を取り戻していきます。
もちろん同じ意見、条件つき肯定的ストロークばかりではないのですけれど、それもまた成長を促す刺激として作用します。
・同じ釜の飯:
ランチタイムは一番楽しい時間。小さなミント○○でさえ、おすそ分けしている光景は可愛らしく素敵です。個・個から集団へ……
またある主催者は、知り合いの弁当屋さんに特注した昼食を配膳してくださいます。食べ盛りさんたちの喜ぶ顔が見たいそうです(*^^*) これこそホカホカストローク!
・学習環境:
お陰様で私の現場は、主催者/企業側の配慮が程よく行き届いており、『学習する環境』の安全感を感じることができるようです。窓からの風、演台と机の配置、椅子の座り心地、空間心理…全てが有効なストローク源となり得ます。
そして
・講師の専門性と“現場力” :
今、目の前にいる大切な人財に、コントラクトで設定された目標に向かってもらうために、現場をどうまとめていくのか? 自己開発・成長に効果的な場の作り方とは?
ただ、やさしいだけでなく、ただ厳しいだけでなく、ただ楽しいだけでなく……
ここの差が、ストローク交換の品質の差異となって表れてくることを、毎年・毎回、肝に銘じて出講します。そこが、プロとしてお金頂いている私自身の発達課題だと常に自分を厳しく評価しています。
そして、一番重要だけれども、なかなか難しいところは、
・新人の能力:
伸びる力の個人差は現実にあります。全員が春のタケノコやアスパラのように同じ長さでグイグイ伸びることはまずあり得ません。
それを自分ができるなんて豪語している講師がいるとしたら、相当ビッグマウスでしょう…
しかし実はこのポイント、頭では分かっていても案外講師業の性というような部分(ドライバー;Be Perfect)でして
全員の身長が伸びないと良い研修ではないとか、全員が理解し気づき、実感していなければならない……とか思い込んでいる講師人が多いのではと思っていて
残念ですが、それは教育者側の妄想だと、自分自身が理解しておく必要があります。
成人である新入社員は、自分の成長・発達に自ら責任を持つ必要があり、そうできる能力があります。
ですが、教育側がどんなに手を尽くしても、ご本人が自ら学び取ろうとしない事には、成人の学習は一向に打率が上がらないのが事実です。
私は、20年以上も毎年何人かの割合で、そういう人を観てきたから“知っています”。
とても残念です。
しか~~~し、逆のパターンもあり!
発達・成長の時期とタイミングはそれぞれにある!と、こちらが理解してどんと構えているだけで、講師と受講生お互いに心のゆとりが生まれてきます。
分からず焦っている新人には、しっかり目を見て伝えたらいいのです。「みんなと同じでなくて良いんですよ。あなたの伸びる時期は少しゆっくりなのだ。もう少しじっくり学びましょう」と。 (TAではこの言葉や態度を「許可」と呼ぶ)
すごいことに、そういう心のゆとりができると、講師側にもその人に対する新しい発見があったり、その人自身も違う場面で活躍したり……、
そしてそして数年後には、見違えるほどグイっと成長した態度で「僕、今度教育担当になりました。」とか言って現れたり。イエイ! !(^^)!
それは、20年間その場に居つづけて、場と人の変化変容を見てきた私が“なんども見ていた景色の1つ”で、職業教育場面での若者支援の醍醐味というところでしょうか。
新入社員と研修講師、そして主催者側研修スタッフ。3者の力動で生まれる学習の場。
新鮮なエネルギーが交換される教育の場は、本当に楽しいものなのです。
次回は、その変化のターニングポイントとなる場面をレポートします。
次回に続く