TAShuharism研究会の理事、降幡浩康(ふりはたひろやす)です。
第二回は私が担当です。
TAShuharism研究会が動き出して早一年が経ちました。
私は2017年にTAと出会い、そこで学んだTA理論に惹きつけられました。
今では、TA理論を多くの人に伝えたいという気持ちでいます。
そのようなTA普及の場のひとつとしてTAShuharism研究会があり、その理事として活動をすることになりました。
今日は、最近の自分のテーマとしている「エゴグラム」について書いてみたいと思います。
みなさんは「エゴグラム」をご存知でしょうか?
エゴグラムは性格診断で使われていますので、名前を聞いたことがある方もいると思います。
では「性格」ってなんでしょう?
なんで「性格」を知りたいのでしょう?
何も問題がないと、そんなことを知りたいと思いませんよね。
きっと、何かが起こって落ち込んだり、相手のことを知りたいと思ったり、あの人との関係を改善したいと願ったり、ふつふつと湧きあがってきた不安を解消したい、と思ったりすることから、自分の性格ってどうなん? と知りたいと思うのではないでしょうか?
組織の中では、チームでプロジェクトを回すために相性の良い人の組み合わせを選んだり、相性の悪い人を組み合わせたりしないように、なんて考えるかもしれません。
私は30年ほど前、会社運営をよりよくするためと思い、エゴグラムを使ってみました。お試し的な意味もあったのですが、その当時は本質的な意味と使い方を理解していなかったので、的を射た結果に驚きつつも数年でやめてしまいました。
今は、TAを学び、理論的な裏付けも理解しているので、エゴグラムについてお話します。
【エゴグラムってなんだろう?】
「エゴグラム(Egogram)」とはどんなものでしょう?
Wikipedeiaでは次のように書かれています。
“エリック・バーン (Eric Berne) の交流分析における自我状態をもとに、弟子であるジョン・M・デュセイ (John M. Dusay) が考案した性格診断法で、人の心を5つに分類し、その5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフにしたもののことである。”
「人の心を5つに分類」とは、TAの「自我状態」の分類のことです。
自我状態は、「親(P)「成人(A)」「子ども(C)」の3つに分類されます。
さらに機能的に「養育的親(NP)」「支配的親(CP)」「成人(A)」「自由な子ども(FC)」「順応した子ども(AC)」の5つに分類されます。
この5つを人の性格を診断する方法として考案されたものが「エゴグラム」です。
エゴグラムは次の図のように表されます。
この図は、5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さ、自分がそれぞれの自我状態にどの程度時間を費やしているか(費やされる時間の相対量)をグラフ化したものです。
考案者のデュセイによれば、エゴグラムとは「それぞれのパーソナリティの各部分同士の関係と、外部に放出している心的エネルギーを棒グラフに示したもの」となります。
ほとんどの人は、家庭や職場、学校、社会活動などそれぞれの環境によって自我状態のエネルギーの消費割合が異なっていると思います。
例えば、職場では上司として部下を指導するので(CP)が強く(FC)(AC)が低い人が、ひとたび家に帰ると奥さんに頭が上がらず(CP)は弱く(FC)が強い、というようなことがあるかもしれません。
エゴグラムは、直感的にどれが高いか低いかを相対的に見るものなので、高さの正確性はあまり問題ではありません。
また、エゴグラムで表されるエネルギーの総和量はいつでも同じだと言われています。ひとつの自我状態のエネルギーが高くなれば、別の自我状態のエネルギーは下がります。例えるなら、1日は24時間ですから、どのような内訳であろうが24時間を超えることはなく、何かに費やす時間が多くなれば、別の時間は少なくなるのと同じです。
「エネルギーの総和量が一定であることは、人の恒常性を維持するために必要だ」と、デュセイは言っています。
エゴグラムを見る際に、注意してほしいのは、グラフの高い、低いは良い、悪いということではなく、個性が強いところと弱いところを表している、ということです。
なので、エゴグラムを見て、自分の低いところの自我状態がわかれば、その部分を高めることを行ってみると、バランスが取れるようになって良いでしょう。
【エゴグラムの実際】
私の“家庭”でのエゴグラムです。
私の場合、(CP)が低く(NP)で「見守っているんだ」と思って子どもに対しほとんど口出しないのですが、親として注意したり指導したりすること、すなわち(CP)を上げることも必要だと感じています。
もし、それが叶えば、(CP)が高まり(NP)が低くなるでしょう。場合によっては、冷静に判断している自分(A)も下がるかもしれません。
私のエゴグラムは、客観的な質問に答えて作成したものではなく、私の主観で描いたものです。
日本では、質問に答えていくとエゴグラムが描かれる方法が主流となっていますが、本来は、自分の感じている状態を直感的にグラフで表します。
いちいち質問に答える必要はないので、いつでも描くこと(利用すること)ができるのです。
描く際には深く考えすぎず、直感で感じたままに描くことが大切です。
【エゴグラムの利用方法】
私はエゴグラムを30年前に会社で利用したことをお話ししました。
エゴグラムは、ある時点でのその人の自我状態(パーソナリティ)が、ほかの人にはどのように映っているのかを客観的に知ることができます。
先ほどの私の事例では、(NP)と(A)が高いから、人あたりがやわらかく、冷静に判断している人なのかな、と伺い知ることができます。
(これが、正しいかどうかは、お会いした人の判断にお任せします。)
このように、エゴグラムは図式化することによって客観的に判断できることから、職場や教育(指導)の現場で利用することができます。
職場であれば、その人のパーソナリティを知ることで、その人がどんな場所、場面でストレスを感じるのかを知ることができるので、メンタルヘルス向上に役立つでしょう。
プロジェクトを始めるにあたっては、メンバー同士の相性や、誰にどのような役割(ポジション)を任せるかといったことの参考にすることもできます。
例えば、(CP)が高い人が集まるプロジェクトは、各々が強く主張しあい、対立が生まれる可能性が高くなる、といったことなども考えられるでしょう。
教育(指導)の現場では、生徒の個性を把握することにより、クラスの構成や生徒の行動、考え方について、客観的な認識をすることができ、さらに共有も可能です。
そして、生徒の個性を知ることで、保護者等との面談の際にも役立つでしょう。
そのほかにも、人が関わる場面であれば、いろいろな活用が期待できます。
【エゴグラムの見方】
エゴグラムは、ある時点、場所、相手によって変化します。また、自分の体調やおかれた状況、環境によっても変化します。
エゴグラムは、本来は、一回調査したことで、その人を「固定」するものではなく、「その時」の「自我状態」の傾向を把握するためのものです。
人間関係でうまくいかないときは、ひとつの自我状態に偏っている、もしくは囚われているように思われます。
何事に対してでもそうですが、 ひとつのことにこだわり過ぎると、良くない結果を招くことが往々にしてあります。
私は娘に対して、冗談を交えつつ話をしていても、冗談の度が過ぎると「もう、やめて!」と怒られます。
妻の娘へのお世話も、度が過ぎれば過保護になります。
指導力がある上司であっても、同じことを繰り返していると部下からは疎まれてしまうこともあります。
SNSで相手を攻撃する人がいます。
その方たちのエゴグラムは、きっと(CP)が高く(NP)(A)はほとんどないと思われます。また、「いい気味だ」というような感情のはけ口としてしていたり、何かの言葉に反応したのであればネガティブな(AC)が高くなっているかもしれません。まったく悪気なく子どものような無邪気な残虐性で他人を傷つけていれば(FC)が高くなっているかもしれません。
エゴグラムは、“その時“の自分の状況を表しています。
その時の自分と、理想とする自分(理想の上司、理想の親)との違いを判断するのに、エゴグラムは役に立ちます。
あるとき、強く言い過ぎた! と思うことがあれば、きっとグラフの(CP)が高く(A)が低くなっていたのでしょう。
その時の状態を、エゴグラムで認識することで、自分を変化させることができます。
目の前の状況を客観的に知り、状況に応じて対応することができれば、理想の自分に近づくことができそうです。
【おわりに】
今回は、TA理論のひとつ「エゴグラム」についてお話ししました。
エゴグラムは、客観的に自分を見つめなおすのに役に立ちます。それも、自分の直感で描くことで十分利用できるものです。
みなさんも、普段使いの気軽さで、ぜひ利用してみてください。
(参考文献)
『ギスギスした人間関係をまーるくする心理学 ~エリック・バーンのTA~』
安部朋子 著
西日本出版社
『TA TODAY 最新・交流分析入門』
イアン・スチャート/ヴァン・ジョインズ 著
深沢道子 監訳
『Egograms and the “Constancy Hypothesis”』
John M. Dusay , M.D.
Transactional Analysis Journal Volume 2, 1972 - Issue 3 p37-41