第41回TAシュハリズム研究会ブログ、
今回の担当はあべともこです。
今週は講座の中身が始まる直後に……
私が実施することについてお話します。
それは、グランド・ルールです。
ほぼ100%に近い確率で
私の講座やワークショップが始まる際に
「グランド・ルール」をご説明するところからスタートさせていただきます。
参加者の皆さんと内容を共有し、講座の中身に進んでいきます。
いきなり、ルール?
と思われる方が読者の方にはいらっしゃるかもしれませんね。
そうなんです……いきなりルールから始まります。
限られた時間を共に過ごす私たち講師と参加頂く皆さんが
居心地よく、精神的安全を感じ
安心感をもって学びを始め、深めていく空間づくりのための
内容の理解の共有、合意を前提にしたグランド・ルールというものがあります。
それは、対面であっても、オンラインであっても同じことです。
まずはここからスタートします。
グランド・ルールとは、元々アメリカから来た言葉で、
スペルは、Ground Ruleです。
草野球が市民の間で娯楽の一つとして楽しまれていた頃に
始まったものだと言われています.
草野球なので、立派な球場での野球ではなく、
川原や、原っぱ、空き地など、その都度異なる場所で
野球を楽しむというところから出来上がった進め方と言われています。
つまり
野球を始める前にどこがホームベースで
どこが一塁、二塁、三塁かを
両チーム全員で確認、同意する習わしだったそうです。
大事なことですね。
どこまで飛べばホームランなのか、ファールなのかと言った
野球を楽しむための基本的ルールと同時に
野球を安全に楽しむためのルールです。
ひょっとしたら、集まったメンバーの顔ぶれを見て、
ホームランになる境界線に変化をつけたかしれませんね?
グランド・ルールは、
野球をする人達全員が理解し、納得し合意した上で成立します。
ということで、
私の講座で行うグランド・ルールも、
それが60分の講座でも90分の講座でも、終日の講座でも
あるいはシリーズで行う講座でも、
毎回講座の初めにグランド・ルールをお伝えし参加者全員で合意します。
その内容は、基本的には
・積極参加
・パスの権利
・相互尊重
・守秘義務
の4つです。
この4つのルールを私がどのように説明するのか、シンプルにお伝えしましょう。
参加されるメンバーで少しずつ伝え方を変えることはありますが、
本意はいつも同じです。
積極参加:
ご自身の時間を調整し参加する講座です。
手に入れたい知識や経験を時間内に手に入れられるよう積極的に参加してください。
講座の時間すべて100%集中するというのは少し難しいかもしれません。
現実的は、講座以外のことも頭の中で少しよぎったり
途中で集中力が途切れたりすることもあるかもしれませんが、
気が付いた時にまた講座の内容に戻ってきてください。
パスの権利:
講座内では、参加者の皆さんが発言する機会を設けます。
その際にご自身の発言内容は、ご自身でコントロールしていただいて OK です。
特に講座がうまくいけば行くほど、自己開示する環境が生まれます。
しゃべりすぎたなと思ったり、
あまり深く内容のことについてお話ししたくなくなれば
ご自身で話すのをやめたり、調整していただいても OK です。
相互尊重:
漢字が示すように、お互いを尊重すると言う内容です。
講座内ではあえて「自分ファースト」、自分を優先するという体験をして欲しいと思っています。
私たちの日常は、職場でもプライベートでも、ついつい他者優先しがちの毎日です。
またそれを期待されるのが日本の社会でもあります。
他者優先は、日本の美しいおもてなし文化を作る基本でもあります。
他者優先が行き過ぎると、
自分の体調や精神的なバランスを崩したり、
人間関係を壊したりする原因にもなりかねません。
ということで講座内では、他者優先を一旦脇に置き
自分優先・自分ファーストで過ごしてみるという体験をしてみてください。
具体的には、質問があったり
分からないことがあればどんな質問も OK です。
声に出してみてください。
自分自身を大切にすることは、やがて相互尊重につながります。
最後に
守秘義務:
現代の社会生活の中で、この守秘義務と言う視点を持つことは、
とても重要視されています。
この講座内で知り得た他の参加者の個人的な情報は
この場限りの話題として取り扱ってください。
講座終了と同時に、その内容に関しては
ご本人に直接であってもお話しはしないという基本的な守秘義務です。
以上が、
私がお伝えするグランド・ルールの基本パターンです。
今までの参加生の方々にお聞きすると、内容的はほぼ変わりないのですが、
グランド・ルールについてお伝えするたとえ話や
伝え方がそのつど異なるそうです。
気になる方は複数ある私の講座にご参加いただき確かめてみてほしいと思います。
このグランド・ルールの基本的な内容は、
「ギスギスした人間関係をまーるくする心理学」(西日本出版社)
第3章 P.23 をご覧ください。
このグランド・ルール講座は、
参加者の皆さんが着席し、簡単なご挨拶をしたのち最初にお伝えします。
このプロセスは、
参加者の皆さんそれぞれが、
外部の環境から心身ともにその講座のスペース(空間)に
落ち着くきっかけをつくります。
グランド・ルールで安心・安全を確認し、
今から何かが始まるんだなという
講座の始まりが楽しみという感覚でしょうか。
自分自身がその場に落ち着く(居場所)感覚が生まれると、
その場にいる自分以外の人達のことが意識に入り、
この人たちと数時間一緒に過ごすということが目の前の課題となってきます。
つまり、自分の隣にいる人たちは、
「どんな人たちなのだろうか?」と意識が向き始めます。
それまでは、ただただ自分がここに座っていても、
安全かどうかが、最大の関心ごと! というステージだったところから、
周囲に目が向くという動きが始まります。
グランド・ルールがないままにスタートした場合は、
自分自身はもちろん、隣に座っている人たちが
どのようにふるまうのかがわからない状態で講座がスタートすることとなります。
それは、ある種の緊張感の連続となるので、
講座の中身が効果的、有効的に伝わることは非常に難しいと私は考えています。
先ほどの野球でいうと、一塁がどこか不明瞭のままで
バッターボックスに立つというとても不安な状態が続いている状態です。
グランド・ルールを全員で同意後、
講座のファシリテーターは、
参加者の「参加されている方はどんな方々?」という不安を
クリアにする作業を行います。
それが、参加者の自己紹介(や、チェックインとも呼びます)ですね。
・お名前、
・どこからのご参加?
・参加目的
・他、
講座のファシリテーターが必要だと思う情報を手に入れると同時に
参加されるグループのお一人おひとりが
自分とほかの参加者との共通項を発見したり
全く異なる価値観と触れ合うことができる情報交換の時間です。
この自己紹介やチェックインタイムで、
自分の他の参加者との(心理的)距離感を自分なりに見つけて安心します。
結果、それに続く、休憩時間やお昼休憩に
お話するきっかけになったりと
いろいろな人間関係の配置図的なイメージを
つくる時間帯を提供します。
(詳しくは、グループ・イマーゴを参照)
「エリック・バーンのTA組織論心理学」(西日本出版社)第2章 P.49~ をご覧ください。
ここまで来ると、講座を始める地盤ができあがったということになるでしょう。
いかがでしたか?
国際TA協会の教育分野の有資格者やトレイニーは、
TA理論をお伝えするだけではなく、
どうすれば、グループが効果的に学べるのか
グループ・ダイナミクスの形成を意識して講座を開催しています。
参加者お一人おひとりがOK-OKの場を体験し、
それを自分の環境に持ち帰り、
家庭を、職場をOK-OKの場を体験できる場として
ファシリテートしてもらえるよう想定しながら、
講座を開催しています。
ご興味のある方は、TAシュハリズム研究会へご相談ください。
一緒に、国際TA協会教育分野の学びを深めていきませんか?
この続きは次回の私のブログでお伝えします。
まずは、
ご家族の(職場の)グランド・ルールを作ってみるのも楽しいかもしれません。
あべともこ